毎年開催されているミラノ国際家具見本市。
今年は偶数年なので、『EUROCUCINA』の年になります。
メイン会場であるRHO fieraもさることながら、街中のキッチンショールームでもこの時期を目指して、新しい商品を投入しています。
bulthaup社の展示
やはり一番注目の展示は、BRERA地区の古い教会で展示していたbulthaup社でしょう。
残念ながら私は時間切れで見ることはできませんでした。
幸運にも入れた人の話を聞くと、多くの人は
「よくわからない」
「ん〜〜つまらない」
という意見が多かったので、日本に帰ってくるまでは「ま、いっか」と思っていました。
しかしYouTubeのこの動画を見て考えが変わりました。
「gain the time」「quality of a moment」
bulthaupの今年の提案は、まずおしぼりを入り口で渡し(日本式のおもてなしだそうです)、入り口から展示物にダッシュせず、一息つくことを促しています。
そして「gain the time(時間を得ること)」それは調理時間を短くできるということではなく、「quality of a moment」一瞬一瞬の質を上げることにより、極めて濃密な時間を提供する。
つまり大切なことはキッチンという物質ではなく、料理する、食事をするという事象であり、そこに存在する人や食材、料理が主役だということ。
これは今年のミラノサローネ全体に行き渡るコンセプトのような気がします。
なので、今年のサローネはその人の立場や考え方で捉え方が全く違うサローネだったと思います。
表面的なトレンドやテクノロジーを誇示することは全く無意味なのです。
そういう視点で展示されているキッチンを見てみると、たとえば天板と扉を45度でカットして(トメ納めと呼んでいます)天板の厚みを見せないようにしたり、引出しの一段めと天板を同じ素材にして、天板とは感じないくらいの厚さにしたりと、キッチンをシンプルに見せる努力をしていることに気づきます。
また、レンジフードやコンロ、オーブン、冷凍冷蔵庫など、キッチンのアイコンを消去することでより人や食材・料理が映えるようにキッチンの存在感をコントロールしていることに気付きます。
▲天板と扉を同じ素材にして、トメで納めることにより大理石の塊のようなキッチンになる。
▲ついに混合水栓までなくしてしまったキッチン。シンク細部のセンサーに手をかざすと水が出てくる)
次回のコラムではミラノサローネをもう少し掘り下げてみましょう。
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