照明のおはなし:「照度」と「色温度」

前回に引き続き住まいのあかりに関して。

照明計画では、「光度」「光束」「照度」「輝度」「色温度」「演色性」という専門用語を使います。

この中で特に「照度」と「色温度」を気にします。「色温度」は前回お話しした通り、空間の雰囲気づくりを大きく左右します。

もう一つの「照度」は照明で照らされた面の明るさのことです。読書や勉強、仕事など作業を重視する場所は明るく(照度を高く)、雰囲気を重視する場所は暗く(照度を低く)設定します。

例えば眩しいほどに明るいカウンターのバーでお酒を飲みたくないですよね。
やはり、グラスを手に取るのに不都合がない程度の暗さの方が艶っぽい雰囲気で、お酒もいっそう美味しく感じるはずですし、そこではいろんなドラマが生まれることでしょう。

「照度」と「色温度」はセットで考える必要があります。照度が高くて色温度が低いと暑苦しく感じ、逆に照度が低くて色温度が高いと寒々しく陰気な印象になり、どちらも不快な感じになります。

ここで一つの問題が発生しました。照明のLED化です。

LEDの光


白熱電球が作られなくなり、計画する照明器具のほとんどがLEDだという人も多くなったでしょう。

しかし、LEDの光というのは、白熱灯や蛍光灯とは全く別物です。非常に強い光が直線的に降り注ぐため、陰影がきつく現れます。光の拡散もなくこれまで通りの計画では暗い印象の空間になるでしょう。
壁や天井にバウンドさせて光を拡散させたり(つまり間接照明ですね)を上手に計画する必要があります。

また、おなじW数でもメーカー間で明るさに差があったり、色温度が同じでも違う色に見えたりします。できるだけメーカーを揃えるなど、十分に検証したいところです。

演色性

もう一つ、LEDで気になる数値があります。「演色性」です。

単位はRa(あーるえー)で表示し、これは照明によって照らされたものの色の再現性を現します。
つまりどれだけ自然な色に見えるかということです。演色性が低い照明の下では青白く病的に見えてしまいます。これは白熱灯時代にもあった数値なのですが、実は白熱灯の演色性はRa100(つまり完璧に再現している)なのです。ちょっと信じられないのですが。

しかしLEDが普及しはじめた頃、値段が安い粗悪なLEDが多く出回り、それらの演色性は決まって悪かったので、LED照明の印象は悪かったと思います。
最近ではLED照明も進化し、著しく粗悪なものは少なくなりました が、Ra80以上のものを使用するよう心掛けたいものです。

あ、もう一つ。LED照明で調光する場合には必ずLED専用の調光器を使用して下さい。白熱灯用を使用すると絞った時にチカチカと点滅してしまいます。

キッチンという空間は家の中でも照明計画が難しい場所です。
料理という作業性を考えると照度も色温度も高くしたくなります。
しかし昨今では、リラックスするリビング空間と食事するダイニング、料理をするキッチンがLDKとして一つの空間に存在します。
それらに求められる明るさはそれぞれ異なりますので、雰囲気を壊さないように色温度と照度を上手く計画する必要があります。

キッチンマイスターは照明計画のこともLEDのことも、しっかり学んでいますので、安心してご相談ください。

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その類稀なるデザインセンスで「キッチンを武器にした提案」をし、数々の施主をがっちり魅了し続けているインテリアデザイナー和田氏。 2009年度グッドデザイン賞(株式会社INAXと共同)や、住まいのインテリアコーディネーションコンテスト2013(2013 経済産業大臣賞)その他受賞歴多数。「キッチンをつくる―KITCHENING」ほか著書も多数。