不要な線を極力なくしたデザイン、『ノイズレス』が流行中

最近のデザイン業界では「ノイズレス」という単語がよく使われています。
「ノイズレス」とは、不要な線を極力なくしたデザインのことを指します。

先日訪れたミラノサローネでも「ノイズレス」デザインのキッチンや家具、インテリアを多く見ました。
特にキッチンではオールドアタイプの食器洗浄機は既に主流であり、またビルトインオーブンさえも扉で隠すという徹底ぶり。
その扉も日本のように比較的小さい扉を使い勝手によって組み合わせるのではなく、大きな扉にして、できるだけ『線』を減らし、収納扉を利用して、収納内部に更に扉や引出しを仕込んでいました。

しかし、一方でフレーム式のオープン収納も多く見受けられました。これはおそらく「ノイズ」を再定義しているのだと思います。
他者が関わったデザインはノイズですが、自らの意思が入ったものはノイズではない。
そう考えると、このオープンフレームタイプの見せる収納はしっくりと入ってきます。 上手ですね。

現在の日本のキッチンにあてはめてみると…?

さて、これを現在の日本のキッチンにあてはめてみましょう。

壁面側は大きな扉の収納で極力壁に見せる。もしくは、以前からこのコラムでも提唱しているウォークインパントリーを利用して、本当に壁にしてしまう。
キッチン側にはシンクとコンロが来ますが、コンロはフラットトップのIHをワークトップと段差無しで納める。シンクはできるだけ角のRが小さい(といってもピン角ではなく半径10mm程度のRが付いている方が掃除が楽ですから)シンプルなシンクを特注します。
洗剤やスポンジも外から見えないように工夫。

ワークトップ下の収納も大きさを揃えた引出し、分割するときは必ず線を揃える。プッシュオープン式にしましょう。
そうすると扉と扉の隙間を極力小さくできます。食洗機はもちろんオールドアタイプ。操作パネルが出ないので、どこが食洗機かぱっと見は分かりません。

ちょっと高額になりますが、MieleのKnock2open式の食洗機を選びましょう。そうするとハンドルさえ不要です。すべての扉がフラットに納められます。
レンジフードも吸込み口が極力薄いシンプルな形状のものを選びましょう。

ほら、極めてノイズレスなキッチンが完成しました。

ノイズがないシンプルな生活

ここまで極端にノイズを消すことはなかなか勇気がいることです。
ただ、普通だと思っていた物や納まりを少しだけ疑ってみることで、生活の中の『ノイズ』は減らせるでしょう。
例えばドア枠や幅木、回り縁などがいい例です。
他者が関わった『ノイズ』を消去した上で、自らの意思を付け加えてみてください。

たとえばペニンシュラタイプのキッチンの場合、コンロの横が壁になりますね。その壁をつるんとしたキッチンパネルではなく、凹凸のあるタイルにする。そうすることで生活が少し色っぽく、すこし楽しくなると思いませんか?

さあ、ノイズがないシンプルな生活を実現してみましょう!!

わたしたちキッチンマイスターはキッチンだけではなく、キッチンを含む空間全体を手がけています。ぜひノイズの消し方をご相談ください。

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その類稀なるデザインセンスで「キッチンを武器にした提案」をし、数々の施主をがっちり魅了し続けているインテリアデザイナー和田氏。 2009年度グッドデザイン賞(株式会社INAXと共同)や、住まいのインテリアコーディネーションコンテスト2013(2013 経済産業大臣賞)その他受賞歴多数。「キッチンをつくる―KITCHENING」ほか著書も多数。