「美しいキッチン」をつくる

さて、「美しいキッチン」をつくるためのポイントとして、前回は『色』についての重要性を書きました。

今回は『線』と『カタチ・色・大きさ・素材・光』について書きたいと思います。

キッチンでいう『線』とは、
■1.各部材の厚みや隙間のこと
■2.背景となる収納の扉の割り付けのこと

各部材の厚みや隙間

まずひとつめ。
キッチンを構成する部材には、いえ、ものにはすべて厚みがあります。
それを意識することは少ないと思いますが、例えばワークトップの厚みが4mm、40mm、80mmでは印象がまるで違います。一般的なシステムキッチンのワークトップの厚みは35〜40mm程度です。
グリル付きコンロ(ガスもIHも同じ)の設計がすべてそのようになっています。なので、どれも同じような印象になってしまいます。

しかし、たとえばシャープな印象にしたい場合はワークトップの厚みを薄く見せたり、重厚感を出したいときにぼってりと厚くしたりといったデザイン的な操作をしたくなりますが、ワークトップの厚みが同じではその違いをはっきりと出すことはできず、なんだか中途半端な印象になってしまいます。
そこで、思い切って厚みを変えてみるわけです。
オーダーオリジナルキッチン038マンションなのに…「木の香る家」
もちろんそのためにはワークトップの素材と納め方の関係も重要です。そういった設計に慣れていないとかえって逆効果になることもあります。
また、部材どうしが隙間なしに置かれることはありません。その隙間は見た目の印象を大きく左右します。
システムキッチンでは安全を見て隙間が5mm以上になることもありますが、そうすると、扉と扉の隙間から収納の中が見えたり、キャビネットの木口が見えてしまいます。

オーダーキッチンの場合、キャビネットの木口は扉と同じ仕上げとすることもできますから、隙間から白いものが覗くような違和感はありませんが、キャビネットの連結部分がはっきり現れたりすると、やはり繊細さに欠けた印象になってしまいます。
可能な限り小さな隙間で、巾を揃えているとすっきりとして整った印象になります。
それはとても小さなところですが、ぜひとも気にしたいところです。

収納の扉の割り付け

昨今のアイランドキッチンでは、壁面収納にするケースを多く見かけます。つまり料理中に立っている人の背景に収納があるわけです。
開き扉の使い勝手やスライドヒンジの耐久性を考えると、あまり大きな巾の扉は避けるべきですが、使い勝手を優先して扉を細かく分けてしまうと必然的にその扉の線が多くなり、まるで方眼紙の前に立っているような雰囲気になってしまいます。
それを避けるために引戸にすれば大きな扉にすることもできます。
扉の素材や色ももちろん重要な要素ですが、「背景」と「使い勝手」の両方を意識した収納計画をこころがけなければならないわけです。

「風景」をつくる要素は『カタチ・色・大きさ・素材・光(雑貨なども含む)』でそれらの組み合わせによって様々な風景を作ることができるのです。
一般的なキッチンは一列、二列、直角で構成されますが、くの字だったり円弧状のキッチンは料理動線を考えると、意外と使いやすいものです。また、使い勝手を考慮したキッチンの大きさも重要ですが、ワークトップの奥行きや長さ、扉の大きさによってイメージは大きく変わります。
キッチンで使われる素材に決まりはありませんし、一種類にこだわることはありません。
素材はメンテナンスと空間全体のバランスで色と同時に考えましょう。

最後に『光』。
キッチンに限らず、住まいの中で『光』のデザインはとても重要な要素です。
まず考えることは自然光(直接太陽光と間接太陽光)と人工光(照明)を使い分けることです。
また、雰囲気を作る照明と作業をするための照明を意識しましょう。計画的に明るいところと暗いところを作ることで、奥行き感のある豊かな空間を作ることができます。

キッチンに限ったことではありませんが、空間の照明計画で重要なポイントは「輝度」「光束」「光度」「照度」「色温度」「演色性」ですが、そのなかでも特に「照度」と「色温度」には注意します。またLED照明では「演色性」も気にしたいところです。

キッチンマイスターはそんな照明の知識も身につけています。
美しいキッチンをつくるために、是非相談してみて下さいね。

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その類稀なるデザインセンスで「キッチンを武器にした提案」をし、数々の施主をがっちり魅了し続けているインテリアデザイナー和田氏。 2009年度グッドデザイン賞(株式会社INAXと共同)や、住まいのインテリアコーディネーションコンテスト2013(2013 経済産業大臣賞)その他受賞歴多数。「キッチンをつくる―KITCHENING」ほか著書も多数。