昨年のEuroCucina、今年のLivingKitchenを視察してもっとも感じたことは、キッチンデザインの多様性、可能性です。
その発想の自由さ、豊かさには驚くべき違いがあります。

キッチン差別化のポイント

キッチンの見た目を左右する要素の一つに、ビルトインされる機器類が挙げられます。
加熱機器、食器洗浄機、レンジフード、オーブンなどがそれです。このなかで、加熱機器はフラットデザインのIHクッキングヒーターが普及し、食器洗浄機は操作パネルが見えないオールドアタイプが主流になり、日本でかっこいいレンジフードといえばアリアフィーナ社、、、と、よほど慎重にカタチやレイアウトを工夫しない限り、見た目の差がどんどんなくなっていく傾向にあります。

ビルトインオーブンがもっと普及してくれば、そこでの差別化も可能ですが、ヨーロッパのミニマルデザイン/ノイズレスデザインを踏襲すると、それさえも扉で隠してしまうので、差別化には繋がりません。

では、次に注目する差別化ポイントはというと、ずばり「水栓金具」です!!

水栓のいろいろ

ジャバラホースタイプの水栓

えっ??そんなにバリエーションあったっけ?と思われるかもしれません。
10年ほど前から水栓金具の主流はクロムメッキ仕上げのグースネックタイプです。
機能的にはジャバラホースタイプ(私はこれをジャラジャラと呼んでいますが)を皆さん求められるので、その分金具本体も太く大きくなりがちです。

せっかくきれいに、すっきりした対面型フルフラットのオープンキッチンが完成しても、その真ん中にでんっと大きな水栓金具があるとなんだかそれが主役のような気がしてきます。本来キッチンの主役は奥様であるべきなのに。

そんな理由もあって、私はジャラジャラ水栓が好きではありません。

ジャバラホースタイプの水栓

最近のシンクは小さくなる傾向がありますから、わざわざジャバラを伸ばさなくてもシンクの端も洗うことができるはずです。
ジャバラが天板の下に収納されるのではないタイプもありますが、これは本体が大きくなるので、コンパクトなキッチンには不釣り合いです。

水栓に限らず、一見便利そうに見える機能でも本当に必要かどうかきちんと見極めることは大切です。

タッチレス水栓

また最近注目される機能として「タッチレス」水栓が増えてきました。

その代表格LIXILのナビッシュは赤外線を使っており、グースネック前面のセンサー部分に手をかざして吐水/止水の操作をします。
私も何度も採用していますが、とても便利です。
機能やデザインによっていくつかのバリエーションがあるので、必要に応じて選べます。

しかし、一つ難点があって、センサーの近くを横切ると(天板からは慣れれば問題ないですが)こちらの意図とは関係なく水が出ます。

センサー式水栓

アメリカの水栓メーカーDELTA社のタッチ水栓はセンサー式ではなく、水栓本体のどこかに触れることで操作できるので、誤動作は極端に少なくなります。

同じアメリカのKOHLER社からもセンサー式水栓が出ています。
こちらはセンサー部分がグースネックの下についているので、前を横切って誤動作することはなく、蛇口の下に鍋を持っていくだけで操作できるというのが特徴です。
しかし、これらの水栓はいずれもコンセントもしくは乾電池の電源を要しますが、Hansgrohe社のスイッチ式は水栓金具先端のボタンを押すことで吐水/止水の操作ができます。

何れにしても、泡が着いていたり、汚れた手でレバーを操作する必要がないため、水栓金具をきれいに保つことができ、また水栓の付け根付近に水が溜まることもありません。

EuroCucinaやLivingKitchenに出展している水栓金具メーカーの展示を見ると、機能面だけでなく、色やカタチのバリエーションが多く見られます。

カラフルな水栓。

素材もいろいろです。

本当にうらやましい。キッチンだけでなく、選択肢が少ないということは本当に悲しいことです。

日本の水栓にも変化の兆しが!

しかし、日本でも輸入水栓を中心に少しずつ変化の兆しが現れてきました。
色や仕上げでいうと、つや消しのステンレス(色)やブロンズ色、ブラックなどの水栓が出てきました。
確かに個性が強いものなので、その水栓を採用すると、キッチンデザインの方向性が決まってしまう危険性もあります。
しかし、それらを上手に取り込むことによって、個性的で使い勝手のいいキッチンを作ることができます。

これからのキッチンは水栓金具の機能だけでなく、色や仕上げといったデザインにも要注目です。
また、水栓金具のデザインを意識するとき、シンクにも気を配りたいですね。KOHLER社の水栓金具とホーローシンクの組み合わせなどは、独特の世界観を演出できます。

キッチンのデザインを左右する要素はほかにもあります。全体のカタチやレイアウトはもっとも大きく、且つ有効な差別化の手段ですが、それらは間取りや生活スタイルによって導きだされるものです。
私たちキッチンマイスターはキッチンづくりのプロであると同時に、住まいづくりのプロでもあります。皆さんに最適な間取り、キッチンをご提案します。まずはキッチンマイスターがいる工務店にご相談ください。

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その類稀なるデザインセンスで「キッチンを武器にした提案」をし、数々の施主をがっちり魅了し続けているインテリアデザイナー和田氏。 2009年度グッドデザイン賞(株式会社INAXと共同)や、住まいのインテリアコーディネーションコンテスト2013(2013 経済産業大臣賞)その他受賞歴多数。「キッチンをつくる―KITCHENING」ほか著書も多数。