「いかに安い家を作るか」をそろそろやめませんか?

今はローコストをキーワードにした住宅が主流です。
家作りマッチングサイトの募集プロジェクトでも大半が「ローコストの◯◯」というテーマのオンパレードです。

もちろん無意味に高い家を作るつもりはありませんし、良いものをより安く作るという努力は必要です。

ひとつひとつの材料、設備を大量生産された安価なものを選びます。
合板に印刷シートを貼ったフローリング、ビニルクロスの壁と天井、サイディングの外壁・・・。ローコスト住宅といっても商売である以上、適切な(できるだけ大きな)利益を得たいわけですから、1ポイントでも掛率が安い商品を選びます。
住宅を作る人たちだけでなく、住宅パーツを供給しているメーカーも価格競争をするわけです。

そうなると必然的に大きな会社が有利です。

生産数が多ければ原価が下げられる可能性が高くなるから掛率も下げられます。
工務店側も大量に購入するからメーカーから安く買うことができます。しっかりした技術で丁寧に時間をかけて家を建てる工務店さんよりも、短工期でバンバン年間棟数を誇る会社の方が有利になります(そういう会社の家が安かろう悪かろうというわけではない。。。。と信じたい)。

また、家を作る費用の多くが人件費ですから、多くの工務店さんは、住宅を安く作るためにはまず手間を省くことを考えます。
住宅パーツメーカーもそのために現場での手間を省く商品作りをします。つまり、同じ商品が同じように取り付けられることになります。
そう言っている僕自身も社会人になった最初の5年間はそこに加担していました。

つまり価格競争が過ぎるとメーカー間での差が出にくくなるわけです。
だからそのようにして作られた家はどこもかしこも同じような家になります。
田中さんちも佐藤さんちも安倍くんちもみんな同じ家なんです。住む人はそれぞれに個性的な家族なのに、住んでる家がいっしょっておかしくないですか?

そんな家ばかりになった結果、何も考えなくても現場にセットで納入される商品、現場で加工しなくてもすむ商品で組み立てられるわけですから、職人さんの腕が落ちました。
何も考えない職人さんが増えました。昔「今の若い大工は柱を見て、末口と元口もわかんないんだぜ」と年配の大工さんがぼやいているのを思い出します。

システムキッチンも、どこも全く同じ

キッチンも同じです。
メーカーが作るシステムキッチンでは、構成する材料、パーツ、設備機器はどこも全く同じで、一切違いがありません。
しかも自社で作っている部材なんてほとんどありません。ショールームのプランナーがいなくても、施主自らがプランできるパッケージ化されたキッチンしかありません。数百万円にもなる上位モデルでさえ、ほとんどがそんな有り様です。
浴室もそう。
今の浴室はほとんどがユニットバスです。メーカーのカタログのちょっと後ろの方の「プランニングガイド」に従ってチェックしていけば誰にでもプランできます。
そんな商品だから、システムキッチンもユニットバスも、標準仕様から外れると(例えオプション対応であっても)びっくりするくらい価格が上がります。

新型コロナの影響で家にいる時間が長くなったはずです。
自分の家のいろんなところに気がついたことと思います。
矛盾を感じている人も多いと耳にします。矛盾までいかなくても、な〜〜んかもやもやした気分の人もいるでしょう。

毎日暮らす空間だから、毎日触る場所だから、毎日食べるものを作る(料理する)場所だから、もっともっと自分仕様にこだわるべきです。
ローコストの家はあくまで「イニシャルコスト」です。そこを下げてランニングコストが高くては意味がありません。イニシャルコストを下げることで日々の生活でストレスが溜まってしまっては意味がありません。

最初にかかる「イニシャルコスト」だけでなく、日々の光熱費やメンテナンス費、リフォームやリノベーションの費用など、その家に住み続ける限りかかる費用も加えた「ライフサイクルコスト」で考えてみませんか?

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あらゆる人の「キッチン力」をアップするために『キッチンのことをきちんと考える』ということに特化した活動をしています。