最近、国産システムキッチンに輸入のビルトイン機器を入れた事例をよく目にします。
ほとんどのシステムキッチンのカタログにスペックされているオプションではないものたち。
標準オプションに比べて高額になるにもかかわらず、一般の方がそれを選ばれたこと(たぶんメーカーから話を出すことはない)、それだけ輸入家電『特に食洗機』の認知度が上がったこと、その良さを知っていただけるようになったことは大変喜ばしいことです。
(写真提供:Float dyed coalo)
元々設定にない商品ですが、単純に納めるだけだったら寸法的にさほど難しいことではありません。
幅45センチ、もしくは60センチのキャビネットを抜いてそこにビルトインするだけです(もちろん給排水設備配管に少しの工夫が必要ですが)。
しかしデザイン的には無理があります。かなり無茶をしてしまいます。
キッチンが綺麗に、素敵に見えるようにデザインされ、且つ機能的にも非常に優れている商品であるはずなのに、中にはその納め方では十分なパフォーマンスが発揮できないのでは?と疑問に思えるような事例もあります(使用上の問題はなさそうですが)。
(写真提供:Float dyed coalo)
なぜそんなことが起こるのか?それは、ひとえにキッチンに対する知識のなさです。
断片的な情報からスペックを決めてしまう施主、その施主から言われた通りにスペックしてしまう設計者、工務店。ほんの少し調べれば分かることなのに。
以前、こんなことがありました。
施主からのご要望は『キッチンそのものには特にリクエストはない。ちゃんとしたものであればブランドにもこだわりはない。一点だけ幅60センチの輸入食洗機を入れて欲しい』ということ。
コストが最優先であったこともあって、当初はメーカーのシステムキッチンを考えました。
コストを抑えてデザインもまあまあと考えてS社のサイトで確認すると、w600の食洗機を入れられない。入れようとすると3つ上のグレードになり予算に合わない。他のメーカーはと探ってみても同様、おまけにキッチンそのものものが超ダサい。
そこでもしかしてと造作で見積もってみると、ほぼ予算内。どのメーカーで組むよりも造作が一番安かった。
システムキッチンは標準や設定のオプション内であれば安いが、それ以外のことをしようとすると、途端に高額になる。
オーダーキッチンは高い!!というイメージで取られるけど、そんなことはない。もちろん上を見たらキリがない。数千万のキッチンだってつくることができる。
しかし条件をきちんと把握して、素材や機器類、作り手などを選別すれば、安くあげることだって十分可能なのです。
ここ数年、工務店向けにキッチンを指導していますが、意識の高い工務店はまだまだ少ない。自分が取り付けたレバーハンドルの高さ、巾木のサイズなどを知らない工務店が多いのには驚いた。
今の住宅パーツ、住宅建材の商流は大手しか生き残れないようになっている(それは住宅業界だけに限ったことではないけど)。
例えば小さな町工場がどうやって生き残っているか?ドラマ「下町ロケット」を見たら分かるだろうに。
大手の下請けとして、日々コストとの戦いを強いられながら続けるか、独自の技術、品質を維持するか。
同じ構図を当てはめたらいい。
楽したいなら、大手の下請けに徹すればいい。しかしハウスメーカーが建てる家って、全体の20%程度だということを理解しているだろうか?
施主のキッチンに対するリクエストが多くなったら(強くなったら)工務店の意識も変わるだろうか?
だったら工務店ではなく施主の意識改革ができるような活動をしたほうがいいのか、、、いやいや、まだまだ工務店には可能性がある。技術は嘘をつかない。技術は裏切らない。そう信じていたい。
あれ?話が変な方向にいっちゃいましたね。すみません。
食洗機の納まりがクソダセェ!!という話でした。
ビルトイン輸入家電をきれいに納めるにはどうしたらいいか
『線を揃える』
これだけです。ね、簡単でしょ。
(photo by mariko yamamoto)
そのためには現物で測るのが一番ですが、現場の都合上、機器を搬入して開梱して採寸、それから図面を描いて、製作に入るというのはなかなか難しいと思います。
今は便利な世の中で、各メーカーのホームページに行くと承認図をダウンロードすることができます。昔はFAXか郵送でしたけどね。それにCADデータを提供しているメーカーもありますから、それを利用します。ただし、そのデータや図面を完全に鵜呑みにしないほうがいい。できれば図面を描いたあとにショールームに行って確認したほうがいい。
(photo by STUDIO KAZ/designed by STUDIO KAZ)
食洗機の巾木の納まり(高さと蹴込み寸法の関係)を詳細にでているメーカーもあります(MieleとBosch)。それらを積極的に利用すればいいだけです。
ほんの一手間かけるだけで、キッチンは見違えるほど綺麗になるのです。
(photo by STUDIO KAZ/写真提供:福建住宅)
(photo by STUDIO KAZ/写真提供:福建住宅)
施主はきれいなところ(すごく拘ってうまくいったディテールなど)には気付かないけど、汚いところ(失敗したところ)はすぐ気付いて指摘をされます。
だから僕ら設計者は慎重な気配りをして「監理」をしているわけです。そんなきれいなところも、引き渡しから数年経って電話がかかってきて「もしかしてここのところって・・・」なんて言われたりすると、電話口でニンマリとしているのです。
もうひとつ解決策があります。「キッチンのことをキチンと理解している設計者・施工業者を見極めること」です。
実は設計者の中にもあまりキッチンに興味がない方が多いのも事実。一方でマニアックなほどに、プロ顔負けの料理をされる設計者も少なからずいます(意外と多いのです)。
そういう人が設計した家のキッチンは、ただ美しいだけでなく、使い勝手もいいはずです。
(photo by mariko yamamoto/designed by STUDIO KAZ)
そう、それが私たちキッチンマイスターなのです。
オーダーキッチンが唯一の答えだとは言いません。お客様の最適なキッチンを探すお手伝いをしています。
キッチンのことをきちんと考える。
それがキッチンアカデミーで学んだキッチンマイスターたちです。
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