ミラノサローネ国際家具見本市

毎年4月中旬にイタリア・ミラノで開催される「ミラノサローネ国際家具見本市」では、偶数年に「Euro Cucina(ユーロクッチーナ)」という世界のキッチンの新しいデザインやコンセプトモデルが発表されるイベントが併設されます(ちなみに奇数年はEuro Luceといって照明にスポットがあてられます)。
Euro Cucinaは、ドイツ・ケルンで隔年開催される「Living Kitchen」と並ぶ、キッチン業界の2大イベントになります。
もっとも最近ではドイツのキッチンメーカーは本国開催のLiving Kitchen に注力し、Euro Cucinaにはあまり力を入れなくなってきているようです。


今年2016年のEuro Cucinaは4月12日〜17日まで開催されました。ミラノサローネはメイン会場であるRho-fiera会場だけでなく、市内のあちこちで展示されているのですが、あまりの多さに全部回るのは到底無理です。
我々はキッチンマイスターですから、もちろんキッチンを中心に見て回ります。

Rho-fiera会場を1日半、市内を2日半かけて視察しました。

日本のキッチンは100歩も200歩も遅れている

視察をしてみての第一印象は、「日本のキッチンのレベルの低さ」です。
デザイン、素材、空間のつくり方(空間の中での存在感)、照明計画など、どれをとっても100歩も200歩も遅れています。
もちろん空間の大きさに決定的な違いはあるものの、『キッチンの魅せ方』の差には愕然とします。

全体の傾向としては2年前のEuro Cucina〜昨年のLiving Kitchenの流れをそのまま踏襲し、目新しいトレンドは見受けられず、肩すかし感はあったものの、見応えは充分で、是非日本でも取り入れたいディテールや素材、プランも多く見られました。

『フラット』なキッチン

ヨーロッパのキッチンでは最近の傾向として、『フラット』というキーワードが挙げられます。
徹底的に扉で隠す。
使わない時はシンクやコンロも隠す。
そのためポップアップ式の混合水栓が多く見られました。

日本での定着はまだまだなビルトインタイプのウォールオーブン。壁面収納にすっきりと納まり非常にきれいですが、このビルトインオーブンでさえ、大きな扉(収納扉か引戸かスイング扉)で隠しています。

素材的にはここ数回の展示会では主流だったクオーツストーンも今回は少なくなり、代わりにセラミック素材が台頭してきました。
またFLEXという一見すると塗装にしか見えないメラミン化粧合板のワークトップも、多くのメーカーで見られました。

それらの素材で共通しているのは、これまでのようなツルツルピカピカの質感は皆無で、天然石の仕上げで使う水磨きのようなつや消しのフラットだったり、日本人の常識ではどうなの?と思うほどザラザラやゴツゴツした質感のワークトップを多く見ました。
扉に使う木もウレタン塗装の鏡面仕上げは全くなく、浮づくりなど凹凸を強調し、節もそのままに、ユーズド感を表現した木ばかりです。
今回見た多くのキッチンで最も感心したこと、勉強になったことは、「段差の使い方」です。

日本のキッチンではできるだけフラットにプランするケースが多いのですが、ヨーロッパの人は段差やオープンスペースを使うのが上手です。
シンクとコンロに段差を付けたり、ワークトップとカウンターの段差を付けたり、壁面側は徹底的に隠してフラットに魅せるのですが、アイランド側はあえて段差を設けたり、扉を付けないところを設けたりしています。
もちろんそれらの場所は『魅せる収納』になりますから飾るセンスが問われます。『隠すこと』と『魅せること』のバランスが抜群にいいのです。

他にもお伝えしたいことはたくさんありますので、次回もEuro Cucinaレポートにしましょう。

このように私たちキッチンマイスターは新しいキッチンのトレンドや技術を日々勉強しています。
きっと皆さんの住まいづくりのお役に立てるご提案ができると思います。
どうぞ、安心してお気軽にご相談ください。

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その類稀なるデザインセンスで「キッチンを武器にした提案」をし、数々の施主をがっちり魅了し続けているインテリアデザイナー和田氏。 2009年度グッドデザイン賞(株式会社INAXと共同)や、住まいのインテリアコーディネーションコンテスト2013(2013 経済産業大臣賞)その他受賞歴多数。「キッチンをつくる―KITCHENING」ほか著書も多数。