満足できないプラン・予算オーバー…「これで最後」

先日、新築戸建て二世帯住宅にふたつのオーダーキッチンを納めました。
雰囲気も全く違うふたつのキッチンです。お客様は非常に満足されています。

このお客様はあるセミナーを聴いて「オーダーキッチンっていいなぁ」と漠然とイメージを膨らませ、 オーダーキッチンを手がけるA社のショールームに行きました。

しかしそこで出されたプランは本人のイメージ以上のものではなく、予算もオーバーしていました。

次に訪れたB社も同じ。その後2社のオーダーキッチンメーカーを廻り、半ば諦めかけていたところにとある雑誌に出会います。
そこに「オーダーキッチンをつくる人たち」というコーナーに載っていた私のところに「これで最後」という思いで来られました。

いろいろとお話を聞いた私は、当初のプランとは全く異なるプランを4パターン考え、一番高くなりそうなプランの見積りを提出しました(その時に相談されたのは親世帯のキッチンのみです)。
見積り金額はキッチンだけでなく、洗面化粧台とトイレの手洗い、設計料まで含めてA社とほぼ同額でした。

その瞬間に設計の依頼が決まりました。

<親世代のキッチン>

<子世代のキッチン>

想像を越えたプラン、レイアウトにワクワクした

先日そのお客様と食事をしている時に聞きましたが、決め手は金額ではなくプランだったそうです。ご自分では想像を越えたプラン、レイアウトにワクワクしたそうです。
その後は(建築士が入っている物件にも関わらず)床材や壁の仕上げ方、照明計画の相談を受け、ついには子世帯の照明計画やキッチンも依頼されました。

生活スタイルから考え、提案する

つまりオーダーキッチンだけを提案してもダメなんです。
キッチンを含む「スタイル」を提案しなければならないのです。そこでのキッチンはオーダーキッチンであることは重要なことではなく、生活スタイルとしてどのようなキッチンが最適化なのかが重要なのです。

店舗のつくり方

最近の店舗のつくり方も変わってきています。

たとえばカフェで食材や雑貨の販売をしていたり、食材を売る店がイートインコーナーを設けるだけでなく、売っている食材を使ったレシピを紹介したり、これまで単一カテゴリーの商材を取り扱っている店が多く、複数のカテゴリーを扱う店にセンスを感じませんでした。
ところが最近は、あるカテゴリーとその周辺にある商材を「情報」とともに扱うようになりました。
そんな店では食材をジャンルではなく、インテリアコーディネートとしてカテゴライズするようになってきました。

つまり「スタイルを売る」という姿勢になってきました。

「見せるキッチン」ではなく「見せたいキッチン」に

「キッチンという景色に家具を溶け込ませること」がインテリアを作り上げるのに重要なポイントですから、キッチン本体だけでなく、テーブルや椅子、収納、お洒落なキッチンツールやきれいなパッケージの食材、ストーリーがきちんとした食材が配置され、「見せるキッチン」ではなく「見せたいキッチン」にならなければならないのです。

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その類稀なるデザインセンスで「キッチンを武器にした提案」をし、数々の施主をがっちり魅了し続けているインテリアデザイナー和田氏。 2009年度グッドデザイン賞(株式会社INAXと共同)や、住まいのインテリアコーディネーションコンテスト2013(2013 経済産業大臣賞)その他受賞歴多数。「キッチンをつくる―KITCHENING」ほか著書も多数。